小学生を指導していて、1年生から3年生の低学年時代の難関は算数の文章題だと感じています。本日は小学校低学年における文章題のスキルアップをテーマにお話しさせていただきます。
そもそもなぜ文章題ができないのか?
男の子は計算が得意な子が多いですよね。しかし、文章題になると手が出ないという子も少なくありません。算数の文章題は算数だけではなく、文章をイメージする国語力も含まれてくる総合問題と言えます。そういったことを踏まえて、指導する側は文章題を教える心構えが大事です。文章題が解けるようになるプロセスをご紹介しながら、指導としてどういったアプローチができるか説明していきます。
レベル1 そもそも文章が読めるのか?
当然のことのようで、このポイントで止まっている子がけっこういます。例えばこんな問題があります。
上記の問題は数字が小さく、足し算を使ったものですので小学校1年生レベルだと言えますが、読解するということを考えると2年生でも引っかかる子どもはいると思います。この問題に対して「15こ」と答えを書いているとしたら、文章題レベルはまだレベル1です。その間違え方は文章を読まずに目についた数字だけを追って計算してしまっています。上記の問題の解説をしておくと「ふたつ」という言葉が出てきますが、これは文章を読んでいない子のためのひっかけです。
子どもが文章を読まないというのはどういうことか。例えば大人でも分厚い本を前にして「こんなに読めないかも…」と思うことはありますよね。それが経済学などであれば、「クズネッツ曲線批判」などと表紙に書いてあったらよほど経済学に明るくなければ本屋で手にも取りません。私なら。子どもたちも同じような感覚だということです。
ではどのような対策が考えられるでしょうか。文章題の第一段階は音読です。声に出して読むことは文章題の力を養うのにとても重要です。最近の小学校の宿題では音読はポピュラーになってきましたが、ここで手を抜くと読む力が養われません。「黙読でも良いのでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、音読は指導する側がその子の力量を知ることにも役立ちます。子どもが音読している読み方のレベルと黙読のレベルはほとんど同じです。つまり音読でスラスラ読めていないのであれば、黙読でも読めているはずがありません。地道な音読の練習が文章題を解く上での大事な基礎を作るのです。
レベル2 文章内の言葉をすべて知っているか
ここは一般的に皆様が感じていることで、文章のイメージができているかどうかということです。また別の例題を出します。
数字が20を超えているので2年生レベルの問題だと言えますが、文章題の言葉をみると3年生レベルの問題になっています。今回のポイントは「けっせき」「しゅっせき」という言葉です。大人ならば当然しっているような言葉でも子どもたちには馴染みのない言葉です。子どもなら普通は「欠席」なんて言わずに「お休み」と言いますよね。文章題は子どもたちの語彙力を計ることもできます。語彙の習得に必要なのは会話や読書です。幼いうちは「これなあに?」とよく聞いてきますが、丁寧に答えてあげることで語彙力はかなり上がります。(余談ですが、そういった点ではクレヨンしんちゃんの野原しんのすけはかなり語彙力が高いです!いつも間違えているけど)また読書することで自然と言葉に触れることができます。
レベル3 文章を読んでイメージができているか。
レベル2の問題で、「欠席」の意味が「お休み」だということがわかっているとしましょう。それをしっかりと頭の中でイメージできているかどうかということが次のポイントです。上記の問題で言えば、「お休みした」ということが「人がいない」となり、つまりそれが「引き算」であるとつなげられるかどうかということになります。算数の文章題は短い国語の物語文と言えます。なので頭の中で絵が浮かんで物語を動かしていく必要があります。文章内の事象をしっかりとイメージができて、ここでようやく何の計算を行っているかがわかります。
イメージ力を磨くためには絵本の読み聞かせが有効なです。「聞く」というのは「読む」に比べるとだいぶハードルが低くなるので、子どもたちもお話を聞くのが大好きです。また絵本はビジュアルとして文章の補足をしてくれるので、自然とイメージ力が身につきます。
レベル4 最後まで集中して文章を読めるか
レベル3までは文章全体のイメージが付くかどうかという「イメージ力」が問われますが、最後のレベル4は集中力が関わります。
この問題で答えを「650円」と書く子は集中力が足りません。「お母さんは1000円持っています。」と書いてある部分に引っかかってしまっているのです。こう書かれるとどうしても「おつり」の問題だろうという先入観が生まれます。しかし最後の文章を読んでみると「使ったお金はいくらでしょうか?」と書いてありますので、正解は350円です。こういったミスもけっこう多いものです。文章を最後まで集中して読んでいればこういったひっかけも見抜くことができます。
当然のことのように感じるかもしれませんが、このレベル4までの読解ができている子はなかなかいません。このレベル4の習得にも音読が良い練習になります。音読はくまなく1文字ずつ読まなくてはならないので、集中力が向上していきます。指導する側は子どもが文章を読んでいるところをしっかりと聞いて、間違いを指摘することが大事です。そうすることでより正確に読むという力が身につきます。それこそ文末が「です」なのか「でした」なのかというところまで指摘できれば、子どもはかなりの力が身につきます。
まとめ
今回は文章題のスキルアップとして4つのレベルを提示いたしました。
高学年になればより難解な問題も出題されます。上記にまとめたことは国語力を磨くことにも通じていますので、ぜひ毎日少しずつ実践してみてください。時間がないという方は学校の宿題で出される音読の練習を少し丁寧に見てあげることを意識するとよいと思います。小学校低学年は土台を作る時期です。勉強もスポーツも日々研鑽が何より大事です。文章題も同じで小手先の対策ではなく地盤を固める練習を行っていきましょう。そのための指針としてお役立ていただければ幸いです。