※この前のお話こちら
初めての小学校授業参観①「日々の生活が現れる瞬間」
初めての小学校授業参観②「夫婦の価値観」
一連の学校公開が終わり、小学校に戻るとすでに数名の保護者が体育館の前で待っていた。体育館では1~3年生の保護者が対象の説明会があり、それをママ友の輪の横で待つ私。説明会では学校の教育方針や小学校の先生の紹介などがあった。
保護者会のため教室へ移動
1年生は2クラスあり、保護者はそれぞれのクラスへ分かれて行く。そして先ほどの授業参観でわが子が勉強していた席に座る。1年生の机と椅子なのでかなり小さい。「同じ日に親子で同じ席に座ることになるとは…」と少し感慨深かった。息子もここから同じ景色を見ていたのだな。
保護者が大方そろい、担任の先生の話が始まる
周りを見渡すとやはりお母さんばかり。父親で保護者会に参加していたのは私を含めて3名だけだった。そのうちの一人はおそらく外国籍の方。土曜日の保護者会だからもっとお父さんがいるものだと思ったが、そうでもないらしい。
今回の保護者会の割合だけで見ると「まだまだ夫婦の育児分担は浸透していないんだな」と上から目線の考えがよぎったが、そのブーメランが自分の胸をえぐる。ブーメランが貫通しないのは「いや、俺は保護者会に出ているし」というちっぽけな自尊心のおかげだ。
息子のクラスの担任は30代半ばの男性。優しさの中に昔ながらの硬派さが見え隠れする雰囲気を私は感じた。先生からのお話をメモをしなくてはと思ったのだが「ペンを忘れた!」相変わらず間抜けな自分だなと自己嫌悪になったが、周りのお母さんたちの中にもスマホにメモしている方が多数いて、少しだけ安心した。
もう紙でメモを取る時代じゃないんだ!
先生からのお話で印象に残ったのは以下の4点。
・鼻水、腹痛くらいでは学校を休ませないでほしい
「学校に行くのが当たり前という意識を児童たちに持たせたい」
入学して間もなくは気持ちが不安定になってしまい、体調不良を訴える児童もいるが、たいていの場合は学校に来て、友だちと接しているうちに治る。なので今の時期はできるだけ学校へ送り出してあげてほしい。
※もちろん発熱や嘔吐、咳などはお休みを推奨する。
・遅刻や忘れ物は親の責任
「小学1年生になったばかりの子どもたちが自分一人で準備をすることは難しいため、保護者がコントロールをしてあげてほしい」
子ども任せでは遅刻や忘れ物をしてしまうのは当然のこと。そのため今の段階では親の責任として管理してあげてほしい。そして習慣が身についてきてからも、いきなりではなく少しずつ手を離すイメージで。
・厳しく文字の形を見ている
「文字のきれいさを磨ける時期は小学1年生の今しかない」
ここで文字の基礎を作ることが後々影響してくる。そのため文字として認識できても、お手本からずれていたら今は×をつけている。文字の練習の時間にテストをしているが、1発で合格する子はほぼいない。
・家庭で児童が担任の悪口を言っても、子どもの肩を持つことはやめてほしい
「そこに親も同意してしまうと児童が学校で言うことを聞かなくなってしまう」
そのときは親として説明をしてあげてほしい。もし気になることがあれば直接担任の私までご連絡ください。
ここまで話を聞いて私が考えたこと
私は以前、幼児教育の塾で教室長を務めていたことがある。上記で説明されたことには納得できるところが多かったが、民間の塾講師の立場では「そこまで言い切ることはできなかったな」などと話を聞きながら考えていた。
塾講師をしていた当時、よく忘れ物をする子の保護者に「塾に来る前に親子で一緒に荷物の確認をしてもらえませんか?」とお願いしたことがあった。その保護者は「わかりました。もちろんやります!」とおっしゃってくれたのだが、結局そこから2ヵ月して塾を退会することとなった。
「そもそも親に余裕がないから子どもは遅刻や忘れ物をしてしまうのだ」と当時の私は気が付かされたものだ。退会の一つの理由に「母への負担」あったのではないかと感じている。(もちろん塾講師としての私の力量が足りなかったということもある)塾を辞められてしまっては本末転倒だ。そこからはできるだけ保護者に負担がかからない範囲で子どもに関わっていくかということを考えるようになった。今でも後悔がある出来事だった。
「親」というものには責任があり、それが負担になってしまうということはあると思う。特に母親はそのプレッシャーを抱え込んでしまう方が多かった。「母の負担を減らし、かつ子どもを成長させること」が講師として自分の役割だと、当時はそのようなことを考えていた。
塾と小学校ではその役割が違ってくる。だからこそ言い切っておいた方が良いのだろうな。物腰柔らかな説明の中に毅然とした態度を見せるこの先生に私は好感を持った。
先生の説明が終わり、次はPTAの役員決めへ
先ほどまでとうとうと話されていた先生も、PTAの役員決めでは基本口出しはせず見守る体制。誰がこの場を仕切るのだろうか、と思っていると二人のお母さんが教室に入ってきた。そのうちの一人のお母さんが開口一番「それではPTA役員を決めたいと思います!」と高らかに宣言し、役員決めがスタート。
学年委員、クラス委員、広報…、などいくつかの役割があり、それを黒板に書き出していく司会のお母さん。手際がいい。
「では、事前に提出していただきました用紙から立候補した方を発表します」
世間的にPTA役員のなすり付け合いがあるということを聞いていたので、どのような展開になるのかとハラハラしていたのだが、ほとんどの役職は立候補用紙を書いた人とその場の挙手ですぐに決まった。中には立候補者多数でジャンケンになることもあったほどだ。
意外とPTAをやりたい人がいるんだな、と少し拍子抜けしたのだが、後々妻から「低学年のうちにPTAになって、仕事の量が増える高学年でならないようにしたんじゃない」という話を聞いた。たしかに6年間のうちに1回はPTAになるということならば、早めに役割を済ませておいた方が楽だったのかもしれない。
順調に役員が決まっていく中、学年委員長だけが決まらず…
やはり学年の長となるポジションなので、かなりのプレッシャーがある。ここで初めて膠着(こうちゃく)状態に。すると目の前で司会を務めるお母さんが「じゃあ、あみだくじですね」と黒板に線を引き始めた。「ではまだ役員になっていない人は立ち上がってください」と役割が決まっていない保護者のスタンドアップ。この司会のお母さん、進行ぶりに少し強引さがあるのだが、確かに強引さがないとPTAは決まらない。たぶん今までの経験の蓄積なのだろう。
席の順番で番号が決まり、その間にあみだくじも完成
進行役のお母さんが「じゃあ、適当に1~18までの数字を教えてください」ともう一人の司会のお母さんに聞いてみる。「じゃあ13で」進行役のお母さんが13本目の線からあみだくじをたどる。
私の数字は8番。行きついた数字は…、「15ですね!」おー!はずれた!
15番の方に目を向けると数少ないお父さん、しかもおそらく学国籍のあの方!
「む、無理です!」という話しぶりからも日本での滞在歴がなんとなく予測できた。少し抵抗してみるお父さんだったが「そうですよね。気持ちわかります。でもそんなこと言っていたら決まらないからね。決定です!」と司会のお母さんは容赦なし。でも本当にそんなこと言っていたら決まらないからね。
これも後々聞いた話だが、学年委員は1学年に1人のため結局このお父さんが学年委員長になることはなく、隣のクラスのお母さんが担当することになったそうだ。
「これがPTAの役員決めか…」
小学校をあとにしながら考える。
「いつかは自分もPTA役員になるのだろうか?」