雑記:改めて、生きていくのって辛いなぁ…

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泣いているサラリーマン

「えっ?異動ですか?」
「実はな、○○の案件が炎上しててな…、お前がそこを立て直してくれ」

私は人材派遣会社で働くナッツ41歳。
私の仕事は企業の中に入り、委託社員を管理するスーパーバイザー(以下、SV)である。
今の会社に転職し、2年目の辞令だった。

どうもその炎上案件を担当しているSVに問題があるらしく、
社としてSVの交代を決断をしたとのことだった。
まだ何の実績もない自分になぜその炎上案件を任せるのかはよくわからないが…。

炎上の内容を確認したところ
「こちらの業務委託スタッフ4名中、3名が同時に辞めたいと言っている」とのこと。
どんな管理をしたらそんな状態になるのか…よほど管理者に問題があるのだろう
最初は私もそのように思っていた。

炎上案件のA社は金融関係の仕事をしており、私は全くの門外漢。
しかし、委託業者の使命はノンコア業務(簡単に言えば雑用)の巻き取りであり、
知識がない中に入っていくことはむしろ「至極当然のこと」といった感じだ。

A社に出社してみて、最初に感じたこと。
「なんか、みんなイライラしているな…」
業務委託スタッフもクライアント社員もみんなが息苦しそうに仕事をしているように見えた。

また意外だったことがある。それは前任SVの山田(仮名)さん。
話をしてみると少し癖はあるが、この業界の経験も豊富なようで、
決して能力が低いわけでも、悪い人でもなかった。
引き継ぎ期間では、山田さんには何度も助けられた。
しかし、その山田さんは、時折こんなことを私につぶやいていた。
「われわれSVっていうのは下請け業者で、人権なんてないんですよ」

山田さんがA社を去り、SVは私1人となった。

ある日、帳票の書き方についてクライアント社員に質問をすることがあった。
クライアント女性社員からの回答
「その書き方、以前伝えましたよね」

かなりの剣幕で詰められた。
そんなことがあっただろうか…、と考えてみたところ、
どうやら前任の山田さんの時代に同じような質問したことがあったらしい。

その記録がどこかにあるだろうかとPC内のExcelやWordを探してみるが見つからず。
いや、どこかに記録があるのかもしれないが、
それぞれのフォルダーに合計100以上のファイルが点在しており、探しきることができない。
質問をするたびに「またですか?」「引継ぎをしていないんですか?」と不機嫌になる女性社員。
これは、質問をしてはいけないということなのだろうか……?

こちら側のスタッフからは
「○○について確認してください」と言われるのだが、
確認すればクライアント社員から叱られる…
確認しなければこちらのスタッフから叱られる…
自分自身の対応もどんどん後手後手に回ってしまっていた。

そんな中、新たな依頼が入る。
「この説明資料を7000部印刷しといてください」
A3用紙15枚分の冊子印刷をしながら、業務を回していかなければならない。
確定申告の時期が迫ってきており、業務はより繁忙へと向かっていった。

コピー機の様子を気にしながら、
委託スタッフに文句を言われながら、
帳票のチェックをしなくてはならない…

振り返って考えてみれば、もっと他に方法があったのだろうとは思う。
しかし、現場の中での私はある種の思考停止状態だった。
「なぜそんなことをするのか?」という疑問を抱くニュースが巷では時々あるが、
追い詰められると人は冷静な判断ができなくなるものなのだと実感した。

そして私の中で、今後忘れることがないであろう一日がやってくる。

「この帳票の資料が足りないのは何でなんですか!?」
と女性クライアントの田中さん(仮名)から指摘を受けた。
確認してみると提出した書類が一枚足りない。
その書類は私の机の上に置きっぱなしになっていた。
どうやら一枚見逃したまま、クライアントへ書類を提出してしまったらしい。

「この書類がないと大問題になることがわからないんですか」
「申し訳ありません」と平謝りの私。
その場はなんとか収まったのだが…。

この日は金曜日で毎週の定例報告会がある日だった。
私と私の上司、クライアント側の部長の3名が参加する会議なのだが、
時間になると会議室に部長の他3名クライアント社員が部屋に入ってきた。

机を挟んでこちら側には私と上司の2人、向こう側には部長と女性社員3人の計4人が座っている。

いつもはいない社員が参加していることについての説明はないまま報告会が始まる。
私から1週間の業務内容の報告を終えたところで、クライアント側の部長が口を開いた。

「これで何度目のミスですか?前任の山田さんのときから今まで半年、ミスがなかった月はありませんよね。以前いた派遣の○○さんは1年間で書類のミスは一度もありませんでしたよ。なぜ、それができないんですか」

というようなことを部長はおっしゃっていた、ような気がする。

私は本当に疲れていた、体も心も。

会議に集中しなくては、と頭では思っていたのだが…、

自然と目に水が溜まってくる。

イヤ!イヤイヤイヤ!!ダメ!ダメだよ!絶対にダメだよ!

この場で泣いちゃうとか絶対にダメだよ!

だって俺はもう41歳だよ!!

おじさんが泣くとか絶対にダメだよ!!!!

頭の中で何度もそう自分に言い聞かせるのだが、体が言うことを聞かない。

目尻に水がいっぱい溜まった状態になってきた。

もうここまで来たら、この水をどうようにこぼさないかを考えるしかない!

まずはPCの画面を一生懸命見ているフリをする、そうすることでクライアントから自分の顔を隠す!

そして考えるフリをしながら少し右上を見てみる。

そうすることで目の中の水を散らしていく。

おっと左に傾き過ぎちゃいけない!今度は左上を向かなきゃ!

いつの間にか会議ではなく、自分の目の中の状態に集中している私。

向かい側に座るクライアントも私の異変に気が付いてきていたのだろう。

部長「と…、まあ…あれだ…、ミスは無くしていかなければならないが、まあ、今は繁忙期でナッツさんも忙しかったのは間違いない。その働きについては理解しています」

ダメ!ここで優しい言い方に切り替えちゃダメ!それはそれで泣きそうになるから!!!

私のこのときの思いは、とにかく早く会議が終わってくれ!

私が自分と戦っている中でも会議は進み、ようやく終わろうかという時間帯に。

がんばれ、もう少しで完走できる…

私の上司「ミスが続いていること、これから誠意をもって改善してまいります。ナッツさんからも最後に何かあります?」

おい!この状況で話を振るなよ!!

上司は私の横に座っているので、私の状況は見ていなかったのだろう

ここで声が震えてしまったらどうしよう…

落ち着いて、落ち着いてしゃべるんだ…

私「そうですね。今回のことは焦りもあったかと思います。以後、気を付けます」

普段通りしゃべれた!たぶん…。

ということでなんとか定例会は終了。
クライアントが出ていく。私の上司も挨拶で出ていく。

会議室で一人になると今まで我慢していたものが噴出してしまった。
41歳にもなって、こんなことで泣くなんて、本当に情けない。
「生きていくのって辛いものだなぁ…」

その日の夜。
退社しようかと思っていた20時頃、クライアントの部長が私に話しかけてきた。

「いやー、ナッツさんよくがんばっていると思うよ。私はあなたのメンタルが心配だよ」
こいつ何言ってやがる!と内心は思ったのだが、部長はこう話を続けた。
「社員の田中がいるだろ、田中は明日も休日出勤なんだよ」

女性社員の田中さんは部のエースで、一番の業務量を抱えている。
他の社員が休んでいる日でさえ、田中さんだけは出社し業務を行わなければならない。
疲れも溜まっている中、私のミスが田中さんの火薬庫に火をつけてしまった、ということが今回の定例会の部長の態度だったということだろう。
エース社員の癇癪(を起こしたかどうかは定かではないが)を抑えるには部長がクレームを入れるしかなかったのかもしれない。

責任を背負って、疲れを背負って仕事をしている田中さん、
部下の気持ちと業者の私の気持ちのバランスを考えながらマネジメントしなくてはならない部長。
それぞれがそれぞれのストレスを抱えながら生きている。

改めて、生きていくのって辛いなぁ…。
そんな話です。

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